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母との残り日7―歳月

 
 昼食時間の前と後に広い施設の廊下をぐるりと一周するのを母と私の日課にしている。
 車椅子の脚乗せステップからは脚を外させて励ましながら足漕ぎをさせている。
自分の足でも前に進めると感じてほしいからだ。
スタッフはそれを危なっかしそうに横眼で見ている。
足をひねってしまったりする危険があるからだ。「大丈夫ですか」と迷惑そうに何度か言われたりもしたが「はい大丈夫です。気をつけます。」と言ってやり通している。
 母にそれをさせ続けたからといって母が立ったり、まして歩けたりする望みがあるわけではない。母がまだかすかにでも自分の脚を動かそうとする意志やわずかな力が残っている限りその機会を奪うまいと思うのだ。左足の動きは特に鈍い。膝や足首の関節を日常的に少しでも動かすことで固くこわばってしまうのを防ぐことができればいいかなと思っている。
 私の本棚に赤茶けた写真が立ててある。二十六歳の母が生後四か月の私を膝に乗せ傍らに五歳になった姉と三十を超えたばかりの血気盛んな父が立っている。若く美しかった母がそこにまぶしく座っている。それから六十数年の歳月が流れた。今また新しい年を迎えられた事を何より母と共に喜び祝おう。

             家族の肖像

テーマ : 生きる
ジャンル : ライフ

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プロフィール

おてんばば

Author:おてんばば
otembaba 長浜友子
(Nagahama Tomoko )
2006年からドイツとポーランドで日本語教師。大学の学生寮になぜかひとり、昔々の女学生が・・・
2008年から野の国ポーランドに再び住み始め、スケッチと簡素な暮らしの不自由さを楽しんだり、嘆いたり。
ポーランド語訳付 tłumaczenie na język polski:Judyta Yamato

2010年10月帰国

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