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母との残り日8―母の隣人

 認知症の母のわきの下や腰回りをクッションやバスタオルで固める。
 テーブルの高さは可動式だが車椅子からの水平距離や肘掛けの高さなどもあり、筋力の衰えた母の肘を常にほどよく支えるのは決して簡単ではない。食事をする時は誤嚥を避けるためにもそれが重要なのだ。完食が続くことを祈って。
 同年でも母より体力も気力も勝る向かい席のI男さんだが出された食事をほとんど食べないためスタッフを毎日のように悩ませている。隣の席のM乃さんは太い注射器で液状食を口に押し込んでもらっている。体中の関節が固く閉じて膝も肘も深く折り曲げられたままになっているのが痛々しい。
別のグループ席のM子さんは辺り構わず怒りだしたり歌いだしたりするのだが、歌う時はよくまあたくさんの歌詞をしっかり記憶していることよと感心させられる。
 そのM子さんがその日も突然歌い出した。
「一兵衛さんが芋掘って~二べえさんが煮て食べた~
三べえさんが酒を飲んで~四べえさんが酔っ払った~
五べえさんがゴンボ掘って~六べえさんはろくでなし~
七べえさんは縛られて~八べえさんは蜂に刺されて~
九べえさんが薬を飲んで~十べえさんが重箱しょって???

 私の何十年もの記憶の闇の中からも愉快によみがえってきたこの懐かしい数え唄、数が進むにつれて深刻な事態になっていく、困ったような歌の締めくくりはさてどんなだったかしら。
 そしてもう一つ、小枝につやつやとした緑の小さな実をつけていたのが愛らしくて持ち帰ったまだ暑さの残る秋の日、はがき大のミニスケッチ帳に描いたままで半年も忘れ去られていたのをきのう、整理の悪い引き出しの中から見つけた。その植物の名も知らないままだ。
 


             縮小木の実


テーマ : 生きる
ジャンル : ライフ

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プロフィール

おてんばば

Author:おてんばば
otembaba 長浜友子
(Nagahama Tomoko )
2006年からドイツとポーランドで日本語教師。大学の学生寮になぜかひとり、昔々の女学生が・・・
2008年から野の国ポーランドに再び住み始め、スケッチと簡素な暮らしの不自由さを楽しんだり、嘆いたり。
ポーランド語訳付 tłumaczenie na język polski:Judyta Yamato

2010年10月帰国

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